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日常会話は?ビジネス会話は?技能実習生の日本語レベルってどのくらい?

技能実習生を受け入れるにあたり気になることの1つが日本語がどの程度話せるかどうか、ではないでしょうか。すでに受け入れをおこなっている企業に聞いても「特に問題はなかった」「意外と日本語が話せなくて困った」などその反応はさまざまです。では、来日時の日本語レベルは実際のところどの程度なのでしょうか。今回は技能実習生が来日までに受ける日本語教育や目指す日本語レベル、受け入れ企業ができるサポートなどについて解説します。

来日当初の技能実習生の日本語力はどれぐらい?

日本語能力をはかる試験として最もメジャーなものが「日本語能力試験(JLPT)」です。難易度の高い順にN1からN5にレベル分けされています。

原則、来日時点での実習生の日本語レベルは介護職の場合はN4が必須とされています。それ以外の職種での具体的な取り決めはありませんが、個人差はあるもののおおよそN4レベルの実習生が多いようです

技能実習生への日本語教育は現地の送り出し機関によっておこなわれます。当組合を例に挙げると、現地の送り出し機関と提携する日本語学校に通学し、介護職の場合は約半年間、それ以外の職種の場合には約2カ月間、日本語の教材を使用しながら日本語習得を目指します。介護職を目指す技能実習生の場合はN4の合格は必須、合格後はN3レベルを目指し勉強を続けます。また、日本へ入国後すぐに企業へ配属されず、一定期間、研修センターで日本語や日本の生活習慣などについて学ぶ時間が設けられます。その後、それぞれの企業へ配属されるという流れになっています。

【日本語能力試験とは】

日本語を母国語としない人向けのテストとして、年に2回、7月と12月に実施されています。日本はもちろん、現地で受験することが可能です。リスニングのほか、文法や文字、漢字を読む試験構成で、マークシート式になっています。難しい順に、N1、N2、N3、N4、N5の5つレベルがあります。

・N1
最も難しいレベルです。「幅広い場面で使われる日本語を理解することができる」ことが認定の目安とされています。たとえば「読む」では新聞の論説や評論など複雑な文章の内容を理解することができたり、「聞く」ではまとまりのある会話や講義、ニュースを聞いて話の流れや内容などを細かく理解することができるレベルです。

・N2
2番目に難しいレベルです。「日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる」ことが認定の目安とされています。たとえば「読む」では、新聞や雑誌の記事や簡単な評論などの内容を理解することができたり、「聞く」では、自然に近いスピードのまとまりのある会話やニュースを聞いて話の流れや内容を理解することができるレベルです。

・N3
介護職で目指すレベルです。「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」ことが認定の目安とされています。「読む」では日常的な話題について書かれた具体的な内容を理解できたり、新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができるレベルです。また「聞く」では、自然に近いスピードの会話の内容やその登場人物の関係をほぼ理解できるレベルとされています。

・N4
介護職で必須となっているレベル、その他の職種で目指されているレベルです。認定の目安は「日常生活で使う基本的な日本語を理解できる」です。たとえば「読む」では日常生活の身近な話題の文章を漢字を含めて読んで理解できること、「聞く」では日常生活の中でのややゆっくりとした会話であればほぼ聞き取れるといったことが求められます。ただし、仕事中の日本人同士の会話のスピードについていくのは難しいレベルといえそうです。

・N5
同試験のなかでは一番易しく、「基本的な日本語をある程度理解することができる」レベルです。ひらがなやカタカナ、基本的な漢字で書かれた定型文などを読むことができ、日常生活のなかでのゆっくりとした短い会話であれば必要な情報を聞き取れることが目安です。

自分が英語などの外国語を学ぶときをイメージすればわかると思いますが、日常会話、ましてやビジネス会話を教科書どおりの言葉だけで100%網羅することはできません。たとえば一般的な教科書では「〜です」「〜しましょう」などといった丁寧語で学びますが、仕事上では「〜やっておいて」「〜じゃないよ」などのくだけた言葉も使われます。業界や職種によっては専門用語も飛び交うなかで、N4レベルの語学力を持っている技能実習生であっても実際には戸惑うことが多いと聞きます。そういった現実問題を踏まえると、技能実習生の理想的な日本語レベルとしてはN3相当といわれます。

日本語ができないことの問題点

技能実習生の日本語レベルが低い場合、以下のような問題が生じやすくなります。

仕事の指示がとおらない

忙しい現場では、言葉を言い換えたり、ゆっくり話をする余裕がないこともあります。仕事の指示が通りにくく、教える側にとっても技能実習生にとってもストレスがたまることになってしまいます。

職場のコミュニケーションが不足する

会話があまり理解できない、会話がおおよそ理解できたとしても、質問ができないという状況の場合、技能実習生が新しい作業を覚えるのにとても時間がかかります。職場の日本人従業員とのコミュニケーションも不足し、現場がうまくまわらない原因にもなります。

孤立してしまう

日本語に自信がない技能実習生は仕事以外の休憩中などでも会話の中に入ることをためらってしまいがちです。その結果孤立し、様々な悩みを1人で抱え、最悪の場合、日本で働くことが難しくなってしまうケースもあります

受け入れ企業ができる日本語教育へのサポートとは

基本的な日本語は現地の送り出し機関が行うものの、入国後、企業に配属された後の日本語を含めたサポートは基本的には受け入れ企業が担うこととなります。ビジネス会話がスムーズにできる状態というのは非常に高いレベルにあることを理解し、専任のサポートスタッフをつけたり、技能実習生が入る現場にも指示の仕方を具体的にレクチャーしておくなどの準備が求められます。また、よりスピーディーに日本語をマスターして欲しいということであればコストはかかりますが働きながら日本語学校に通えるよう手配したり、市町村等でおこなっている日本語教室を案内するのも1つの方法です。

外国人技能実習機構では、機械・金属関係職種、 食品製造関係職種、建設関係職種、農業関係職種といった一部業界向けのみですが、現場用の日本語を教える教材やアプリを開発し、無償でダウンロードできるようになっています。日本語習得を技能実習生だけに任せるのではなく、一緒に学ぶイメージでサポートしていくことが大切ではないでしょうか。

外国人技能実習機構による一部現場向け日本語教材・アプリ
https://www.otit.go.jp/kyozai/

まとめ

様々な受け入れ企業があるなかで、技能実習生と日本人の職員の方々が冗談を言い合えるような会話の多い現場であるほど、技能実習生の日本語の上達は早いといえます。会話の内容が伝わっていないようであればゆっくり話す、言い換えて話すなど、コミュニケーションをとるための工夫や努力を重ねることは、日本人職員の意識の向上にもつながります。技能実習生が日本で前向きに働きながら学べる環境をサポートすることは、技能実習生はもちろん結果的に受け入れる日本企業にとってのメリットにもなるのです。

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